自分のための心理学として

アマゾンから「ユング心理学入門」河合隼雄著が届く。「フーコー入門」中山元著も。八方美人に入門だらけでこれがマーシャルアーツなら門前払いされているところだけど、メディア専攻としてはいろんなとこに足はつっこんどいたほうがいいでしょう。専門分野は別に持つとしてもね。
ちなみに最新の論文と雑誌は英語で読みたいのでかわりに古典と入門書は日本語、という方向で分けているのです。配分がやっかいだけど、偏ってもいかんしなー。

しかしあれだけフルメタルジャケットとジョーカーのDUALITYに対する愛を語っておいて、今までユングをまったく知らなかったってのも片腹痛いですな。無知とは赤面しつつも楽しいもんです。
さらりと読んでまず感想のメモ。本はいつも数回読み込むタイプなんで、読み落としやカンチガイもおおかろうと思いますが。

無意識の働きについては今までフロイトの性還元論（と、勝手に呼ぶ）における抑圧と葛藤にアグリーだったけれど、コンプレックスというかたちでの体系化はよりフレキシブルな感じ？ま、アドラーの権力欲もうんうんと思うし、誰の要素が絶対というよりはミックスしたものなんでしょうね。フロイトとアドラーの差は、つまるところ性欲と権力欲のどちらに出発点を置くかという差に思えるし。外向／内向や四つの心理機能による分類だって、結局は個人個人のなかで複雑に交ざり合って反発しあういろんな意識の総体の、あえて目立つ特徴だけをとりだしてみる「指標」にすぎないんであって、「ラベル」じゃないと。

不安定さを限りなく不安定なままで理解しようとするのは、自分の考えにしっくりくるなあ。陰陽的なアイデアもね。人間の幸福は影という存在を必要とする、というとまるで村上春樹だ。エンドオブザワールド。

ペルソナとアニマはまあ半分くらい理解しつつ今はスルー。前者は映画分析で使いそうだけど、ここはユング自身の著書も読まないといけないところだろし。キューブリックサイトでのFMJ分析でポイントになってた「共同意識」と「個人意識」についても要チェックと。

「メタ視もしくは他者の目で自分を観察する行為の積み重ね」が自身の無意識／意識／自我を形成していくとしたら、その不安定さに生きられた時に、それでもその混沌の「中心点」を保つために働く要素ってなんなんだろう。士郎正宗にいわせりゃゴーストなんだろうけど。

本としてはすごくよかった。東洋と西洋の思想の違いをわかりやすく解説してるし、実体験から語っているので無理がない。ユングを消化している人が書いてる。しょせん他人の理論から理解できることなんで自分がすでに知っていることだけなんだろうけれど、他人の「体験」を追うことでその先を見るための理解がすこしは可能になるんだろな。海を渡って送ってきてもらった甲斐がありました。