メディアは戦場にしてゲリラなり。

イギリスの総選挙が近づいています。

新聞も、たまに観るテレビも、日本でもはじまったいわゆる「マニフェスト」つまり公約について斬ったり掘ったり大忙し。ライブの演説とかはまた別として、全体的には党が言った事を単に丸呑みにしてたれながすんじゃなくて、その裏まで批判的に分析かけてるのはなかなか見応えがありますね。

例えば数日前のBBC特番では、保守党の「労働党が政権をとってから犯罪率が上昇している！」という主張に対して「１９９７年と２０００年に軽犯罪の定義が変って、いままで注意で済んでるケースも逮捕されるようになった。そのせいでトータルの犯罪件数は上昇したが、実際は強盗や殺人などの重犯罪、また空き巣や車の盗難はむしろ１９９７年以減少しているんだ」とかなり強く反論。
労働党のカタもってんのかな？と最初は思ったけれど、その上で「しかし実際の犯罪抑止力は、防犯システムやアラーム、警備会社などおおきく民間の力によるもの。労働党そのものの政策はどれだけ効果があったのか。。。」とこれまたかなり批判的。

なんだかんだ言ってやっぱりオモシロイわBBC。報道が権力にケンカを売れる姿勢を持てるってのは、なかなかいいもんだなあと思います。

キャンペーン合戦もずいぶんと加熱してるようです。自分の周りにやることがたまってるせいであんまり詳しいとこまで読んで無いんでツッコミや解説は控えたい、というかまず無理なんですが、それでも（プレスのべんきょー昔にしてたなりに）気になってしかたないことはあります。

リベラル（自由党）が出してたキャンペーン広告について一言もの申す。

ブッシュ大統領とブレアー首相が並んでにこにこ笑ってる図の下に、
LOST TRUST IN BLAIR'S LABOUR?「ブレアー労働党の信用はもう失い？」
time for a REAL alternative. 「本物の、代わるものの時間だ」

つまるところ、
ブレアーはもうダメです。奴はブッシュの手先です。保守党もダメだから、そこで私達リベラルにまかせるべきです。それが真の選択！！
って言いたいんでしょうが、
ブレアーを小泉に変えて、保守党を民主党あたりに変えてみると（リベラルに何が入るかはともかくとして）説得力無い文句なのが実感できますね。。。

ダメと言う理由も代案もリベラルのページまで飛べば読めるんだけど、その１クリックをさせるくらいのパンチが無いんですね。
アメリカ大統領選挙でもそうだったけど、反ブッシュ＝ケリーだった人の中にどれだけ民主党の政策が浸透していたかは不明だし。つーかしてないんじゃないかな。トップを叩くことで自分に視線を向けさせるのって実際そこまで有効とは思えないのよね。本当に見てもらいところまで視線が届かないで終わってしまう。

いつぞやのアドバスターズの訳文でもありました。
「コカコーラはもうダメだからペプシです」
ではいけません、と。
「若くてフレッシュなペプシです」
みたいに、自分とこのウリをちゃんと全面に出せないとダメ広告だと。

その点、保守党はなかなかキャッチーです。例えば
「移民の制限を課すのは、人種差別主義じゃない！！」
と白地に黒の手書き文字でどかーんと書かれたポスター。
保守党いわく、市民から実際に寄せられた手紙だそうですが。
うまいね。移民問題はイギリス社会の懸念事なわけで、でも人種差別に超うるさいお国柄としてはデリケートな問題でもあるわけで、それを直接じゃなくて他人に言わせつつ「この方針でゆきまっせ」てのもアピール。
それでも保守トップの言動そのものは「差別や！！」と非難されてたりもしますが（こちら参照）話題づくりと党の方針をひろめるには効果的だったと思います。極論だけど、投票するのはイギリス人ですからねえ。。。

イラク戦争関連ではもう散々叩かれつつも、労働党のポスターはこれまたすごかった。保守のトップの顔を空飛ぶブタとコラージュしてましたわ。何の皮肉だったかなあ？けっこう前の記事だけど家のどっかに残ってるはずなんで、見つかったら追記しときます。とにかくインパクトはあった。選挙という究極に公共の場においてさえ、相手をこきおろすのにそこまでやるか。。。と逆に感心しちゃいましたね。リベラルのはちょっと大人しすぎたかな。

観る側を退屈させない「政治」をしなきゃいけない、ってのも大変です。でも、広告と報道、つまり話題づくりとツッコミってほんと重要だなあとこの総選挙キャンペーンを見てて思いました。ちゃんと政策の内容にまで突っ込んで、さらにそれで視聴者を「楽しませる」技術にも手を抜かない。TVタックルがいっぱい！！ふむふむ、勉強になります。

ま、投票できない部外者だけどさ所詮。

＊追記.
インディペンデント紙が４／１９に発表した世論調査だと
労働党支持３７％、
保守党支持３２％、
自由党支持２１％。
おお、接戦だね。ただ労働党にはブレアーの代わりがちゃんといるんだな、財務担当ゴードン・ブラウン氏。彼がリーダーを仮定した場合の労働党支持はなんと４８％！！
たとえ政権とったあとにトップ争いでもめることになっても、今回も労働党カタいかしら。保守、いかに女性陣の票をゲットできるかが労働党の砦を崩すカギのようです。ブレアースマイル（笑）と医療関係の政策で女性支持もってかれちゃってるから。
しかし、これだとリベラルのキャンペーンはほんとパンチにかけまくる現状。。。